成都写真記(2)西部大開発の中心地

2000年以降、推進される「西部大開発」の中心地、四川省成都GDP成長率は8%超え
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成都放射線状の幹線道路が有り、一環路の半径が3km、二環路が5km、三環路が15km、成都の人口1400万人のうち、約800万人は三環路以内に住む人口密集地
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その中心地「春熙路」には多くのブランドショップと高層ビルが乱立
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夜にはライトアップされ、週末には多くの若者で賑やかに
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市街地中心にある寺院の隣接される形で高層ビルが建設され、急な開発計画を想起
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成都最大のショッピング「太古里」
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「太古里」の地下にある本屋
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二環路沿いにある建設途中のショッピングモール
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モノレールではなく、二環路を走る公営バス
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バス専用レーンを走るため、渋滞にも巻き込まれず、地下鉄と合わせて市民の足
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イトーヨカドーの全店舗のなかで世界一の売上を誇る1996年設立の成都1号店、成都では現在7店舗あり、四川省全体での総売上は日本の総売上を超える
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平日の昼からヒトでごった返す中心街、その多くは観光客
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四川省成都から約1時間でチベット。ラサ空港は標高3,500mに位置し、世界有数の高標高にある空港
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ラサから一時間半、向かうはネパールの首都カトマンズ
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ネパール写真記(3)現地カレー料理に魅せられて

伝統的な家庭料理「ダルバート
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チベット由来の焼きそば「チョウメン」
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国民的食べ物「ジャガイモ」
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チベット由来の蒸し餃子「モモ」
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とにかく「カレー」
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カトマンズに居住する「ネワール族」の水牛料理
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ネワール族の友人とお酒を飲みながら交流

#yummy #nepal #ネパール #ネワール族 #ジョウロでお酒 #かなりの酔っ払い

 打ち合わせ先でのダルバート
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ダサイン(お祭り)でのダルバート
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チベット由来の汁麺「トゥクパ」、数少ない非カレー味
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長距離移動中での間食
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川魚の姿焼き、余りに美味しく翌日も二尾完食
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長距離移動中の間食、マトンカレー
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露店で売ってるタマゴ煮
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露店で売ってるジャガイモ煮

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ネパールの即席麺市場はインドの半分と巨大f:id:masaomik:20170801163326j:image

豆料理
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一般家庭でのダルバート
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お代わりするのがマナー①
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お代わりするのがマナー②

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お代わりするのがマナー③
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南アジア分析(下)アフガニスタン市場アクセスと強まる中露の包囲網

 昨年12月、インドのモディ首相とアフガニスタンのガニ大統領による二者会談が行われ、両国は航空貨物の輸送協定の締結に向けて大筋合意に至りました。アフガニスタンは主に軍事機器の輸入促進と、関連し軍事演習の強化による国内の治安改善を目的とし、インドにとってはエネルギー豊富な中央アジアに隣接するアフガニスタンとの外交関係を良好にし、パキスタンを迂回したアフガニスタンの市場アクセスのルートの確保を目的とするものとなります。強い緊張状態にある印パの国境沿いを牽制する動きでありながらも、トルクメニスタン水力発電所が豊富なタジキスタン等、人口増大による絶対的なエネルギー不足に陥るインドにとっては、中央アジアの資源確保及びそのためのアフガニスタンへの市場アクセスは至上命題になっており、既に20億ドルを同国の経済復興を目的としたインフラ開発に投じているなか、インドのアフガニスタンに対する投資は今後加速するものと予想されています。

トルクメニスタンを起点にした各種パイプライン図
参照:http://www.iranreview.org/content/Documents/TAPI_Pipeline.htm


 またこの二国間による航空貨物輸送協定は昨年5月にイラン、インド、アフガニスタンの3ヶ国間で締結されたイラン・チャバハール港のインドに対する使用許可及びインド資本による同国のインフラ開発の協定を補足するものとなります。インドのイランに対する積極投資は経済特区SEZの設置と合わせたチャバハール港の港湾開発のみならず、イランの南北1,300kmを鉄道で結ぶ「南北経済回廊」を含むものとなり、中国の「一帯一路」構想に対抗するものとなります。合わせてインドはイランの石油・天然ガス分野に対する大型投資を行う旨を発表し、また、昨年末においては印モディ首相による中央アジアツアーが実施され、キルギスタンや上述タジキスタン等に対し、投資促進含む経済協力や安全保障協力の協定が締結され、インドにとって戦略地政学上、重視するアフガニスタン及び中央アジアとの関係を深める動きが始まっています。

インドのイランにおける「南北経済回廊」概要
参照:http://www.livemint.com/Politics/pI08kJsLuZLNFj0H8rW04N/India-commits-huge-investment-in-Chabahar.html

インドがアフガニスタン市場アクセスを国家戦略としているのは、急増するエネルギー需要に対するその施策と一貫となります。具体的にはTAPI(TトルクメニスタンAアフガニスタンPパキスタンIインド)の天然ガスの輸送パイプラインの経由地となるアフガニスタンとの外交強化にあり、インドはアフガニスタンパキスタン以東に位置しているため地政学的な劣勢下にあるなか、2012年にパキスタンとともにトルクメニスタンからの天然ガスのパイプラインの建設計画協定に署名をし、TPCL(TAPI Pipeline Company Limited)と呼ばれる運営会社の設立、並びにトルクメニスタンにある世界2位のガス埋蔵量を誇るガルキニッシュからアフガニスタンを経由し、パキスタンとインドと国境沿いまでの約1,600kmのパイプラインの建設が正式に始まりました。

TAPIプロジェクト図(緑で塗り潰された地域がタリバンの支持基盤となるパシュトゥーン人居住地域)


 2019年に建設終了が予定されているTAPIは、約30年間に渡り、年間ガス輸送能力は330億立方メートルを送る世界最大規模の天然ガスの輸送パイプラインとなり、四カ国間での交渉役をアジア開発銀行ADBが一部担うことで複雑な利害関係を乗り越え、南アジアのエネルギー不足を解消し、地域に平和と安定をもたらすことになるでしょう。

 
 IPI(IイランPパキスタンIインド)のパイプラインやTUTAP(TトルクメニスタンUウズベキスタンTタジキスタンAアフガニスタンPパキスタン)の電力送電線の建設計画も合わせて進められており、中央アジアからアフガニスタンを経由し輸送されるこれら合同プロジェクトはインドがパキスタンに対して大規模な軍事的攻勢に打ち出ることの出来ない一つの要因となり、中国はその状況下、インドとアフガニスタン、イランの間に位置するパキスタンを「一帯一路」構想における最重要国とすることで、中パ経済回廊CPECを建設し、また永世中立国であるトルクメニスタンをユーラシア経済連合の拡大路線に乗せたいロシアに対し、CPECの出口に当たるパキスタンのグワダル港の共同港湾開発という形で南アジアでのパートナーとして迎え入れました。ロシアはパキスタンのグワダル港以西のインフラ構築を行うことを既に表明しております。


 しかし、この印パによるエネルギー・インフラ構築プロジェクトにも大きな障害が立ちはだかります。それはアフガニスタンの安全保障問題です。19世紀、英国領インド帝国の支配下に置かれた現アフガニスタンは三度に渡る独立戦争を経て、1919年に英国より独立を果たしたものの、その地政学的な要因から他国や多民族から多くの干渉を受けて来ました。20世紀の冷戦時においては、社会主義の拡大を狙う旧ソ連から度重なる侵攻を受け、1979年には軍事介入がされる「アフガニスタン侵攻」が起こります。旧ソ連の撤退以降も内戦が長く続き、タリバンの台頭を許し、1996年には首都カブールを制圧、その後、国土の約9割を掌握しました。

 2001年に起きた米国同時多発テロ以降、米英等による軍事行動が実施され、北部同盟アフガニスタンを奪還、その後和平プロセスを経て復興が為されています。一方、山岳地帯を中心に引き続きタリバンの活動拠点となり、また、英国からの独立時にアフガニスタンパキスタンに分断されたパシュトゥーン人の居住地域の政情不安を引き起こし、それら地域を通過するTAPIプロジェクトは厳重な警備のもと慎重にその建設工事がされており、工期に遅れが発生しています。この観点からインドのエネルギー不足は今尚解決しておらず、ロシアに触手し、資源が豊富な中央アジアとの関係を深めるのは当然の動きと言えるでしょう。

中国の新疆ウイグル自治区に隣接するアフガニスタン「ワハーン回廊」
参照元http://project-himalaya.com/trek-wakhan.html

 中国にとってもアフガニスタンは戦略上重要国家となります。それはアフガニスタン北東部、中国との国境沿いにあるワハーン回廊の治安問題が顕在化しているためです。新疆ウイグル自治区に隣接する同回廊を伝い、イスラム過激派の流入を恐れる中国は経済の安定が治安の正常化をもたらすという概念のもと、アフガニスタンに対する積極的な投資を行い始めました。中印で対立するパキスタンのグワダル港とイランのチャバハール港の港湾開発、そしてそれに基づくCPECを中心とする中国の「一帯一路」構想とインドの「南北経済回廊」の競争は最終的にアフガニスタン経済の安定とその貿易含めた外交関係に大きく依存することになります。


 アフガニスタンの輸入統計を見ると、中国とパキスタンの高い影響力と、また陸路で隣接されていないインドがその経済関係において中パに大きく後塵を拝している状況を伺い知ることが出来ます。輸送量に制限があるため、インドとアフガニスタンの航空貨物輸送協定は貿易関係の大幅な改善に至らず、インドにおけるアフガニスタン市場アクセスは困難を伴っています。また政治的関与も無視することは出来ません。アフガニスタン復興を主導する四カ国の枠組みであるQuadrilateral Coordination Groupは米国、アフガニスタンパキスタン、中国で構成されており、インドはその主導権さえ握れておりません。

 2016年5月3日のthe Diplomatの記事"Where Does Afghanistan Fit in China’s Belt and Road?"によると、パキスタンと比較すると投資額が小さいものの、今後、中国はアフガニスタンをその「一帯一路」構想に取り込むことを伝えており、経済特区SEZの設置を中心とした経済開発とワハーン回廊を中心としたインフラ開発を行うことで、その経済的影響力を高めて行くことになるでしょう。これら内容を深く分析したものとして、2016年6月9日のthe Diplomatの記事"5 Reasons Gwadar Port Trumps Chabahar"では、アフガニスタン市場アクセスを巡る中国とインドの攻防も、中国の圧倒的勝利に終わるという内容を伝えております。

 また、インドの輸入統計を見ると、中国の高い影響力と中東を中心とした資源国への貿易依存が目立ちます。高いGDP成長率を維持するなか、貿易赤字の拡大とエネルギー供給源を確保に苦しむインドは国家戦略上最重要視していたアフガニスタン市場アクセスの政策も振るわず、「メイクインインディア」を中心とした内需の喚起に今後集中していくことになるでしょう。そして、エネルギー問題については中露同盟に依存していくことになり、中国がトルクメニスタンウズベキスタンカザフスタン等の中央アジアから引いているパイプラインを一部インドに回すことで対応していくことが予想されています。

 これは中露が進めるユーラシア経済統合と上海協力機構の協調路線に重なる動きであり、中国の習国家主席は印モディ首相に対し、「一帯一路」構想への参加の呼びかけを行っています。そして、中国主導で進めるAIIBにおいては、提案事業が審議検討段階に入っているなか、インド国内のインフラ開発を多数盛り込みました。これは昨年6月のインド財務大臣による「財源に限界があるなかAIIB融資の活用機会を模索する」という発言と一致し、両首脳間ではインドが中国の「一帯一路」構想に加わるという大筋合意が出来ているものと推測しています。
 

中国の「一帯一路」構想図
参照:https://www.merics.org/en/merics-analysis/infographicchina-mapping/china-mapping/

 南アジアはいま大きな変革期のなかにいます。インド一強時代は間もなく終焉を迎え、アフガニスタン市場アクセスは本年をピークに中国が積極投資を開始することになり、中央アジアと南アジアの融合が図られて行くことになるでしょう。そして多くの利害が一致する中露が主導し、インドを支配下に置いたうえで、政治経済の安定秩序が図られ、それは域内においてはSAARCの価値低下に繋がります。カシミール問題に起因する印パの強い緊張関係で延期となったSAARCの次回会合の日程が未だに決定していないなか、上海協力機構には本年、インドとパキスタンが加盟することになっています。中露の包囲網が高まっており、両国に手綱を引かれる形で、南アジアは2017年、極めて厳しい試練に向き合うことになるでしょう。



Afghanistan by Asian Development Bank on Exposure

ネパール写真記(2)ヒマラヤ目掛けて山岳バスアタック

ネパールの国土面積は北海道の約二倍、東西に1000km、南北に300kmのネパールは北部1/3が山岳地帯。ハイウェイがとても狭く、長距離バスは基本ミニサイズ

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標高約1300mに位置する首都カトマンズは周囲を山々に囲まれ、古い街並みが残る盆地

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今回の山岳バスアタックは満席に付き、何と初のフロント座席!喜ぶ僕を含めた輩4名での楽しい7時間、中距離バスの旅となります
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 山岳地帯のバスは険しく、揺れに揺れ、そして右手に美しいヒマラヤが微かに見えます

 

 一方、待機する近くのバスを見ると、虚ろな目で僕を見つめるネパール人女性。長時間バスはこのスシ詰めの状態で12時間以上揺られ、体力を相当消耗します

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移動前日はヒンズー教の宗教儀式「ホーリー祭」 
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昼間っぱらから踊り狂うこと、約6時間。基本、この国では踊れない男はモテない

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これは以前乗った12時間長距離バスの移動標高グラフ、ネパールの1/3は標高200m以下の平原となり、約500kmの移動は最終的に2000m近くまで上がり、気温差が約20度

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 途中、前方を確認するのが困難なほどの霧がかかり、バスの転落事故が多発します

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ヒマラヤから流れてくる川も美しく、そろそろ雪解け水で水量が増す季節

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 標高2000mから見る突き抜けた景色、目の前に見えるのは紅茶の産地で有名な印ダージリン地方

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 しかし、今回の行き先はヒマラヤ麓の産地。遠くに見えるのは恐らくアンナプルナ連峰

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 輩4人のバスの旅は音楽がかかってハイテンションMAX。このノリで7時間はまさに日本ネパール友好の架け橋となるでしょう

 

#nepal #himalaya #ネパール #前回の続き #この音楽で7時間 #ヒマラヤ #最高

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ヒマラヤがドンドン迫ってきます

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 山岳民族の農民と元気良く「ナマステー」と挨拶した僕は、荘厳綺羅びやかなヒマラヤを僕は間近で見ることが出来たのか

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ネパール写真記(1)踊りに興じる花嫁たち

悪名高いネパールの首都カトマンズの国際航空に降り立った僕

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すし詰めのバスはもう慣れたもの、向かうは10年前の駐在時の部下の結婚式

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ここはキルティプルと呼ばれるカトマンズ郊外にあるネワール族の農村地帯

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会場入口では新婦(右)が壇上中心に座り、出席者を出迎えてくれます
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夕方から既に多くの参列者が軽食に並びます

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この会場が最終的には500名以上の出席者で埋め尽くされ

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会場の雰囲気が徐々に盛り上がってきます
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 その最中、既に踊り出す女性たち
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サリーを身に纏った花嫁たちもその至福のひとときを踊りで表現
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そして会場の雰囲気は絶頂へ 

#ネパール #nepal #今宵は無礼講

駐在時の元部下も集まり、日本から持ってきた「松竹梅」で乾杯!
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 最後はカレー「ダルバート」で締める安定のネパール

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 Bhuwan、本当におめでとう!!!いつまでもお幸せに
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南アジア分析(上)中国パキスタン経済回廊CPECは勢力関係の縮図

中国とインド洋をパキスタンを経由して結ぶ「中国・パキスタン経済回廊(CPEC=China Pakistan Economic Corridor)」を通った積み荷が2016年11月13日、初めてスリランカコロンボ港を経由し、アラブ首長国連邦のドバイに向け出港しました。CPECは中国の「一帯一路」構想における中心的な役割を果たし、その出口に当たるバロチスタン州にあるグワダル港周辺は中国による厳重な警備体制が敷かれています。CPECにおいて中パの思惑はエネルギー政策の一点で合致しています。近い将来、米国を抜き世界第三位の人口に躍り出るパキスタンが待ち受けている深刻な電力・エネルギー不足をCPECによって解消し、一方、中国側はマラッカ海峡南シナ海を経由せずに中東や中央アジアのエネルギー資源を確保出来るという両国のメリットが強調されたものとなり、英国からの独立以降、域内での影響力を誇示するインドを孤立させるために、中国は長期間に渡り、パキスタンとの有効な外交関係を築き、また、特に2000年代に入ってから多額の外国直接投資を行ってきました。

CPEC建設計画概要
参照:http://www.siasat.pk/forum/showthread.php?412555-CPEC-Map-and-details


 総投資額(予算)460億ドルのうち、約330億ドルを石炭・火力、水力、太陽光、風力発電等のエネルギー分野に投下資本され、また、今回開通したのは、なかでも治安が比較的良いとされる最東ルートとなり、首都イスラマバードからラホールを経由し、パキスタン最大の都市カラチ近郊を通るものとなります。今後はアフガニスタン国境沿いルートでの建設も進むことになるでしょう。

ナショナル・ジオグラフィック提供のCPECの動画。13:39から圧巻の映像となります

 同時に注目されるのは約60億ドルを鉄道建設計画に当てられていること。2016年12月2日のthe Diplomatの記事"Trans-Himalayan Railroads and Geopolitics in High Asia"によると、ヒマラヤ横断鉄道の計画が検討されており、CPECの一部となる世界で最も標高が高いカラコルム・ハイウェイが開通している地点に併設にされるものとなります。既にパキスタン鉄道がその鉄道路線計画図の発表を行っており、最終的には、先日、中国と英国を結ぶ貨物列車が運行したアジア横断鉄道新疆ウイグル自治区にて支線化され、中国、南アジア、中央アジア、ユーラシア、欧州と張り巡らされる鉄道網の一部となるでしょう。その他、南アジアでは東西を結ぶインフラとしてBCIM経済回廊(BバングラデシュC中国IインドMミャンマー)とBBIN経済回廊(BバングラデシュBブータンIインドNネパール)の創設が構想されており、後者は巨大経済圏との融合を恐れる人口75万人のブータンが拒否の姿勢を貫いているものの、インドへの水力発電での売電を経済成長の柱としている同国は中国に対抗するインドに説得される形で最終的に協定に締結することになるでしょう。

中印の域内FDI残高比
参照:http://www.cfr.org/economics/economics-influence-china-india-south-asia/p36862


 1947年の英印の解体及びインド、パキスタンの独立以降、域内では印パを軸にした二項対立のもと、多くの民族・宗教紛争が見られ、長期に渡り、経済開発が着手出来ない状態にありました。一方、中パ経済回廊CPEC構想が持ち上がった2000年代以降、中国は域内構成国に対し、開発ドナーとして、また貿易パートナーとして多くの投資を行い、影響力を高めてきた背景があります。経済的観点では、外国直接投資及び貿易額でその内容を見ることが出来ます。上記グラフは中印の外国直接投資残高比となりますが、残高比ではほぼ均衡するバングラデシュでさえ、貿易額では中国優位の状況になり、南アジアにおけるその高い影響力を伺い知ることが出来ます。

 



 その中国にも不安視していることがあります。総投資額(予算)460億ドルとなるCPEC沿いにおける治安悪化であり、それは特に中国側の入口に当たるカシミール地域、そして出口に当たるバロチスタン州におけるイスラム過激派によるテロ活動や分離独立運動の高まりであり、それは安全保障への脅威のみならず、投資の減退予測が見込まれるものとなります。またバロチスタン州においてはインドがその分離独立運動に手を貸しているとされ、その観点から、パキスタンが牽制する「カシミール」とインドが牽制する「バロチスタン」は中国にとってトレードオフの関係にあります。

CPECルート拡大図
参照:http://www.indiandefencereview.com/news/what-is-china-pakistan-economic-corridor-all-about/

中国新疆ウイグル自治区カシュガルを起点とするCPECは、インドの「ジャンム・カシミール(J&K)州」に程近いパキスタンの「ギルギット・バルティスタン州」を通過するルートを取り、それら地域はアザド・カシミールと合わせてパキスタン実効支配地域(POK=Pakistan-occupied Kashmir)と呼ばれ、インドの実効支配地域であり尚且つ、カシミール分離独立運動が1947年以降絶え間なく続くJ&K州でのカシミール紛争の影響を強く受けます。また、グワダル港があるバロチスタン州はパキスタン国土の4割を占めるものの、人口は5%に過ぎないためパキスタン政府から冷遇されており、グワダル港での収益やアフガニスタンとの国境沿いにある石炭や天然ガス等の豊富な資源の権益を州により還元するよう反政府運動が活発になっています。

 また、同州北部最大の部族であるパシュトーン人は、19世紀後半から20世紀初頭にかけて英国との間で行われたアフガン戦争の結果、その居住地がアフガニスタンパキスタンの2つに分断され、それは主にパシュトーン人を支持組織とするタリバンのテロ活動温床地域となっています。2016年には州都クエッタにおいて、反政府勢力パキスタンタリバーン運動(TTP)」による連続テロ行為があり、合計数百名の死者に上りました。複数ルートが存在するなかで、CPECが最東ルートを取った理由はこの地域の治安悪化の影響を最小限に留めるためであり、然しながら、グワダル港がある以上、同州の治安正常化は中国・パキスタン両国にとって至上命題になるでしょう。

グワダル港(パキスタン)とチャバハール港(イラン)
参照:https://www.pace.pk/iran-india-chabahar-afghanistan/

中国が租借したパキスタンのグワダル港に対抗するため、インドはイランのチャバハール港の港湾開発への大型投資の協定を昨年締結し、インド洋における中印の対立は一層激しいものになっています。域内投資や開発ドナーとして中国が優位に進めているなかでインドがその動きに強く対抗する理由はエネルギー供給源となる中央アジアに隣接しているアフガニスタンへの市場アクセスのルートを確立するためであり、国境を面していない以上、海上ルートしか存在しません。

 2050年までにはパキスタンが現在の1億8000万人から倍増の3億5000万人に、インドは12.5億人から16億人に到達し、また、中国を抜いて世界最大の人口となり、同時に、絶対的なエネルギー不足に陥ることが現時点で危惧されています。しかしながら、僅か72kmの距離の差に過ぎないグワダル港とチャバハール港でのアフガニスタン市場アクセスに関する中印対立も中国優勢が伝えられています。その鍵を握っているのはイラン。欧米が経済制裁を課すなか、将来的なエネルギー不足を見込み同国の石油や天然ガス資源の供給ルートに投資を継続してきた結果、いま現在、イランの最大の貿易相手国は中国となっているなか、イランとインドの協定は港湾開発の投資を主としており、相互依存を深めるイランが中国との実利経済を反故にしてまでインドに貿易上、加担する理由を見つけることが困難であるためです。輸出品目の約8割を石油や天然ガスで占めるイランの輸出統計は下記となります。


 先日、パキスタン政府が中国が租借しているグワダル港をロシアにも開放する旨の発表を行いました。2001年、中国、ロシア、中央アジアによる国際機関としてスタートした上海協力機構はその後、規模を拡大し、2017年にはインド・パキスタンの加盟が見込まれています。またオブザーバー国となるイランも近い将来加盟することになるでしょう。一方、ロシアと中央アジアの経済同盟であるユーラシア経済連合は、上海協力機構と「大ユーラシア・パートナーシップ」構想を掲げ、その南アジアでの試験的な取り組みをグワダル港の中露共同での港湾開発に置きました。インドが主導してきた南アジアは中国の「一帯一路」構想とロシアのエネルギー政策によって、将来的には中露の枠組みに取り入られることになる形でその経済連合であるSAARCは形骸化していくことになるでしょう。